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リハビリテーションコラム
2022.06.01
現在の日本は、糖尿病・予備群と合わせて2000万人といわれています。早期発見には定期的な検診が有効とされている中、40歳から74歳までの方が受けられる特定健診(メタボ健診)の実施率は50%ほどとされています(表1の⑥)。また、糖尿病患者さんの4人に1人は治療を受けていないとあります(図2)。
表 1:糖尿病の発症予防と重症化予防の徹底に関する目標
(健康日本 21(第二次)「国民の健康の増進の総合的な推進を測るための基本的な方針」より、一部改変)
図2:「糖尿病が強く疑われる者」における治療の状況
平成 28 年「国民健康・栄養調査」の結果 結果の概要より引用
糖尿病治療には食事療法、薬物療法、運動療法の3つが根幹になるといわれています。運動療法は主に①散歩などの有酸素運動、②筋力トレーニング、③ストレッチ、があります。それぞれ①ではエネルギー消費や減量、②では筋力増強や基礎代謝の向上、③では柔軟性の向上や疲労回復の促進、が期待できる効果です。運動量は個々の食事量や運動習慣、年齢、性別を考慮しますが、運動療法で大切なことは「量」よりも「頻度」とされています。なぜならその日に実施した運動の効果は3~4日で徐々に低下し、1週間後には消失するといわれているからです。運動の強度は一般的に中等度の有酸素運動が勧められています。運動時の心拍数において、50歳未満では1分間100~120拍、50歳以降は1分間100拍以内に留めることが指標となっています。また、ご自身の疲労度において「楽である」または「ややきつい」といった体感を目安にすると良いとされています。「きつい」と感じる時は、強すぎる運動です。「継続できる運動習慣」の獲得が大切です。
運動の頻度と負荷量は、できれば毎日です。少なくとも週に3~5回、強度が中等度の有酸素運動を20~60分間行い、計150分以上運動することが勧められています。さらに週に2~3回の筋力トレーニングを同時に行うことが勧められています。歩行運動では1回15分~30分間、1日2回です。1日の運動量として歩行は約1万歩、消費エネルギーとしては160~240kcal程度が適当とされています。運動で消費するエネルギーはそれほど多くありません。200kcalに相当する食べ物は、リンゴ1個やハンバーガー半分、飲み物では牛乳333mlです。つまり運動だけではなかなか減量が難しいです。
「軽い」運動では、軽い散歩や軽い体操(立って行う)を各30分前後です。「やや強い」運動では、ウォーキング(速歩)や平地での自転車、ゴルフを各20分前後です。ジョギングやテニス、水泳といった運動は「強い」「激しい」運動に該当します(図3)。また、運動する際には、足に合った靴を履いて頂くことも大切です。低血糖症状の予防にブドウ糖あるいはそれに代わるものを携行することや、日本糖尿病協会が発行するIDカードの携帯も、外出時での運動では大切な準備です(図4)。
図3
図4
糖尿病を抱える人が1000万人以上いる一方で、その改善に向けた運動療法をはじめとする治療手段も多く報告されています。糖尿病を抱えていても、学校や就労、社会への参加はできます。病気への理解と偏見の無い社会構築のために、私たちリハビリスタッフも一役を担いたいと思います。
図5