はじめに
脳卒中後遺症や上肢の骨折など様々な要因から日常生活上で上肢や手指を使うことが困難となった場合に、機能改善や疼痛緩和、感覚入力、残存機能を活かした新しい使い方の学習などを行い、再度生活で腕を使っていただけるように上肢機能練習を行っていきます。
その方法は多様で、直接腕の関節を動かす練習をしたり、電気を用いて腕の筋肉を刺激したり、大小様々な大きさや形状・材質の物品を用いて腕の動きを練習したりと、その方の障害の特徴に合わせて練習方法を選んでいます。
今回はリハビリ中に用いることが多い、検査道具と訓練道具などを一部ご紹介します。
検査道具
腕や手の検査を行う場合、純粋に腕や手の関節・筋肉の働きを確認する方法もありますが、専用の検査道具を用いて「物品へ腕を伸ばす」「物品を掴む」「掴んだ物品を移動する」といった実際の動作を確認するものもあります。検査毎に判定方法が異なりますが、腕や指の状態を点数化していき、練習の効果を判定したり、弱点となっている部分を見つけその後の練習内容の参考にしたりと様々な用途で用いられています。
Simple Test for Evaluating Hand Function(STEF)
脳卒中後遺症のみでなく、骨折などの整形疾患による上肢の運動障害にも適応できる検査です。それぞれの物品を移動するのにかかった時間で点数をつけていきます。
Action Research Arm Test(ARAT)
様々な形状、大きさ、重さの物品を移動することで上肢機能を検査していきます。指定された動作の可否やその動作の質によって点数が変化していきます。
Wolf Motor Function Test(WMFT)
前記2つが正面方向への動きに限定されているのに対し、この検査では側方への動きなども組み合わせて検査を行い、動作の所要時間と動作の質で点数をつけていきます。
練習道具
物品を掴む、動かすなどの練習内容に使う道具
腕を上げる、伸ばすなどの大きな動作の練習道具
アクリルコーン、輪っか、棒、サンディングボードなど
つまむ、離すなどの指の基本的な動きの練習道具
ペグ各種、セラプラスト
複数の指が絡んだ細かい動きの練習道具
おはじき・お手玉、ビーズ通し、トランプ
食事や着替え、家事などの実際の生活で使う動きの練習道具
お箸、衣服、ピンチハンガーなど
電気刺激を用いて腕の筋肉を刺激する物理療法機具
ご自分の意志では十分に力を入れることが難しい筋肉に対して、筋肉の収縮を促す、筋肉の柔軟性を保つ、痛みの緩和を図るといった目的などで使用されています。
ミラーセラピー
様々な理由からご自身の腕を認識することが困難な方に対して、鏡像による脳の錯覚を利用して腕の認識を向上させる、筋肉の働きを促すといった目的で使用されています。
電気を使った練習
鏡を使った練習
ロボットを用いた練習
Tyro motion(myro,diego,Amadeo,pablo)
4種類のロボットを用いて、腕の大きな動きから指の細かい動きまで様々な腕の動きの練習が可能です。画面に表示された情報に従って、ゲーム感覚で腕や指の動きの練習を行うことも可能です。
おわりに
脳血管疾患の後遺症として運動麻痺を呈した場合では、腕の問題だけでなく認知機能を始めとした考える力が腕の動きを悪くしてしまうこともあります。そういった様々な問題点を見つけ適切な治療を行えるよう、様々な道具を使いながらリハビリスタッフと一緒に練習をすすめていきましょう。