「介護を要する」ということ
回復期リハビリテーション病院では、脳卒中や骨折、および肺炎後の廃用症候群などの様々な疾患に対してリハビリテーションを提供しています。患者さんの回復に務める一方で、全ての患者さんが元通りの生活に戻れるのか、というと、実際はご家族の支援や医療保険、介護保険等を利用されて、“障害と向き合う生活”となる場面があります。その中で、介護を要する生活は、患者さん自身のみならず、ご家族や同居者の生活スタイルの変化が考えられます。具体的には、時間や仕事、お金の要素に変化を感じている報告があります(図1)。介護期間(時間)は平均で61.1カ月(5年1カ月)、介護費用の平均(月額)は在宅で4.8万円、施設で12.2万円(ともに障害の程度や介護区分によって異なる)との報告があります(図2、3)。また、介護を要する可能性は疾患によって傾向があり、認知症および脳卒中疾患が比較的高い割合となります(図4)。このように、介護を要するということは多くの変化を伴うことがあり、患者さんやご家族、および同居者に向けたアプローチ・支援は、重要なセラピストの役割です。
図1:介護生活におけるアンケート調査(株式会社エス・エム・エス 2018調査より)
図2:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度より
図3:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度より
介護が必要となった主な原因の構成割合
(出典:「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」厚生労働省 2023.7.4より作図)
図4:介護が必要となった主な原因の構成割合(厚生労働省 2022より)
退院に向けた、患者さんやご家族および同居者へのアプローチ
- 住環境の評価と調整:患者さんが自宅で安全に生活できるように、住宅改修の提案(手すりの設置、段差解消など)を行います。担当のケアマネージャーや福祉用具業者と連携を図ります。
- 福祉用具の選定と提供:歩行補助具や車椅子など、患者さんのNeedsに合った福祉用具の選定と使用方法をお伝えします。
- 自主トレーニングの指導:身体機能や健康維持のために必要な運動療法をお伝えします。
- 日常生活動作手順や注意事項の指導:運動機能のみならず、注意機能や認知機能などの高次脳機能もふまえて、日常生活動作が効率的に行えるよう動作手順のお伝いや、転倒予防といった注意事項等をお伝えします。
- 就労支援:職場復帰に向けた練習を行います。
- 地域リハビリテーションの紹介、連携:退院後もリハビリを継続できるように、当センター内の機関をはじめ、地域の訪問リハビリや通所リハビリ施設を紹介、連携を図ります。
- ご家族、同居者への介護指導:適切な介助方法や患者さんの身体機能および動作能力に合わせた関わり方のアドバイスをさせていただきます。
退院後のフォローアップ
- 医療、介護サービスとの連携:訪問看護や地域包括支援センターなど、他職種との連携を図ります。
- 訪問調査や電話相談:退院後の生活状況を把握し、必要に応じて追加の支援を行います。
【引用文献】
1)
https://www.bm-sms.co.jp/news-press/prs_180802_anshinkaigoresearch/ (2025年1月7日閲覧)
2)
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html (2025年1月7日閲覧)
3) 日本リハビリテーション医学会:回復期リハビリテーション病院の役割と実践,2021. Retrieved from 日本リハビリテーション医学会公式サイト
4) 厚生労働省:地域包括ケアシステムにおけるリハビリテーションの役割,2020. Retrieved from 厚生労働省公式サイト