第15回のコラムでも述べているように、厚生労働省が発表している2019年の「国民生活基礎調査の概況」によると、「認知症」、「脳血管疾患」、「高齢による衰弱」に次いで、「骨折・転倒」は介護が必要となった原因の第4位となっています。
その中でも、救急搬送されたうち87.7%が大腿骨近位部骨折(太ももの付け根)になっています。次いで、上腕近位部骨折(腕の付け根)、橈骨遠位端骨折(手首)、腰椎圧迫骨折(腰骨)となっています。
各骨折の説明
①大腿骨近位部骨折(太ももの付け根)
太ももの付け根の骨折の好発部位は、大腿骨頚部、大腿骨転子部になります。
骨粗しょう症により骨が脆弱した高齢女性に多く、受傷機転は、転倒によるものが多いです。特に屋外だけではなく屋内でも発生することがあります。
受傷をすると立ち上がることができなくなり、強い痛みを生じます。
②上腕骨近位部骨折(腕の付け根)
腕の付け根の骨折の好発部位は、外科頸で全骨折の4~5%を占める頻度の多い骨折になります。
骨粗しょう症により骨が脆弱した高齢女性に多くみられます。転倒により肘をついた際に介達外力※1により生じます。
※介達外力…受傷部から離れたところに働く外力。すなわち間接的に働く外力のこと。
③橈骨遠位端骨折(手首)
手首の骨折は、大きく分類すると3つに分けられます。コーレス骨折、スミス骨折、バートン骨折になります。これは、骨折した骨がどちらの方向へずれているか、または、周りの状態で分類されています。
この骨折は、中高女性に多いですが、若年者でもスノーボードなどのスポーツで手を着いた時に生じることもあります。
④腰椎圧迫骨折(腰骨)
圧迫骨折は、骨粗しょう症により転倒だけではなく自然に発生する場合があります。加齢に伴い、骨の強度が低下することで起こりやすいです。高齢者において自然多発的に骨折が起きると背中が丸くなってきます。
特に胸腰椎の移行部に起こりやすく、上から10番目の胸椎から2番目の腰椎に好発します。
おわりに
高齢者における骨折の多くの原因は、転倒によるものですが、骨粗しょう症により骨が脆弱した状態になっていることも大きな原因です。普段からウォーキングや体操などの運動習慣やバランスのとれた食生活が骨の強度も高められます。
【引用・参考文献】
・病気がみえる vol.11 運動器・整形外科 第1版 岡庭豊 他 p248.320.324.330
・理学療法 高齢者における転倒予防-この10年の成果と次の10年に向けての課題- Vol.37 No.10 2020
・高齢者における転倒・転落の発生状況とその要因 奥泉 宏康 p868-876